ベトナム公使を囲んで 6月20日、栃木県アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会主催のベトナム公使を囲んでの懇談会に参加した。ベトナム大使館のルォン公使がベトナムの国の成り立ちや戦争と人民のたたかいの歴史、社会主義建設の到達、今日の課題などについて流ちょうな日本語で語った。10年におよぶベトナム戦争で、インドシナ全体をまかなえるほど゛だったメコンデルタの食糧生産は大打撃を受け、北側では爆撃を受けながらそのあいまに農作業や生産活動をする習性によって生産規律が失われていた。そして戦後の貧困から国民を守るための政策は猛烈なインフレを引き起こしていった。そこからどのように社会主義建設をすすめたのか、身を乗りだす思いで聞いた。
ドイモイ 計画経済と市場経済の融合 最も興味深かったのはドイモイと呼ばれるベトナムの経済政策。「なぜベトナムは戦争に勝って経済に負けているか」と経済政策がうまくいっていないことを率直に認め、オープンな討論と検討を重ねたそうだ。そして全国民が参加する経済でなければうまくいかないこと、国家だけでなく国がやれないことを民間がやる政策を取り入れていったという。社会主義の理念をたいせつにしつつ、計画経済で生じた問題点もしっかり認識し、国民と一緒に一歩一歩改革を進める姿勢に共感した。ドイモイの成果として3年でインフレも収束にむかい、人口の75パーセントを占める農村の生活も安定したという。国は電力、エネルギー、銀行などを国営とし、民間銀行も株式の50パーセントは国が持つ。第二ステップとしての行政改革と民主主義の実現にもとりくんでいるという。貧困層は85年に65%だったものが95年には38%にまで改善した。 農村と都市の格差はあるが、農村の物価が安定しているため、農村から都市への流入はすくないとか。今直面している問題として、世界的なエネルギー、食糧問題とインフレをあげた。ドイモイ政策に取り組んで22年、年7%の経済成長率を続けてきたことがインフレにもつながっているという。最貧国から工業国への発展を目指すベトナムだが、農業の技術向上をぜひ日本に学びたいと語っておられた。またアジアでの日本バッシングについて、ベトナムは独自の見解と立場を持つことも強調された。
新しい光があてられている社会主義 いま日本では資本主義の矛盾がマスコミにも注目され、将来社会主義・共産主義をめざす日本共産党にもかつてない関心が向けられている。サンデープロジェクトで田原氏と日本共産党の志位委員長がずばり社会主義の問題について語り合う番組が放映されたり、週刊誌でも特集が組まれたり。日本の社会の矛盾の深刻さのあらわれでもある。市場経済を取り入れた新しい社会主義をめざすベトナムの国づくりに大いに注目していきたい。
もっと観光や国際交流を ところで栃木県に在住するベトナム国籍の人は830人ほど。栃木県を訪れる観光客も「アジアその他」としての統計しかない。けれども日本からは年間42万人もの人がベトナムを訪れているという。着実に発展をつづけるであろうベトナムには日本との経済・文化・観光などの交流において大きな可能性があると感じた。栃木県でももっと交流を深めたい国の一つである。